ガタガタと震えていた体が、
少しずつ、少しずつ…
ほぐれてきた、
その時、
「どうして、だって?」
男は、口の端で可笑しそうに笑う。
煙草の煙が、舞い上がる。
そして、
「男が女を連れ去るのに、難しい理由がいるのか?」
男の、その言葉に、一気に青ざめた。
「やっ……」
車から逃げようと、ドアに手をかける。
「やめとけ、今車から転がり落ちたら、骨の一本や二本じゃすまないぞ」
更に青ざめ、ドアにかけた手が止まる。
「いい子だ。なに、大人しくしてりゃ痛い思いせずにすむ」
なにそれっ、
どういう意味!?
やだっ、やだよ!
どうしよう!?
どうしよう、ジュン兄っ!
さっきよりも、
私の体も唇も、
濡れた寒さと、怖さで、
震えが止まらなかった。