窓を開けて、
私は風をそっと抱きます。
風を抱くと、
私の身体も
風と同じように
透き通ってゆきます。
私はいたたまれなくなって
病室を抜け、
冬の庭に出て
空を見あげます。
枯れた桜の木の下で
空を見あげていたら、
針のような細い枝のまわりに、
薄い光が
笑っているのが見えます。
暖かな
オレンジ色の光が好きです。
いつも影ばかり見つめがちだから、
そんなやわらかで
やさしい光にひかれます。
私はそんな光に手を伸ばします。
指先には
何も触れることはできないけれど、
ほんの少し
春の気配が感じられます。
明るい光の中にいると、
気がついたら、
私の頬は
薄い紫色にぬれています。
