「アザム! 必死に頑張れば仲介屋の勉強は五年だそうだ。ベリル殿? 私は現役を引退後は一応自由ですよな? いつでもアザムの先生になってやるぞ! それまでは医学や看護を今以上にみっちりすればいいんじゃないか? 確かに医学や看護だって知っていて損は無い。実際自分は傭兵でありながらも確かに違う知識も持ち合わせている」

 後ろから応援するように声を掛けるティーロの声に、エメラルドの瞳は振り向き睨みつける。

 アザムは二人が味方してくれている事がとても嬉しかった。確かに知識を得る事はとても苦労するとは理解している。

「ベリルさん……五年かもしれない、もしかしたら僕なんて十年以上掛かるかもしれない。けど、ベリルさんなら、ベリルさんだから助けられる命があるって僕も、今回の父さんの件で再認識出来た。ベリルさんは最後の希望であり、“素晴らしき傭兵”なんでしょ?」

 少年の言葉を小さくため息をついて呆れた顔で金髪の青年は聞いている。

「僕が十年掛かっても、最低三十五年間は僕は一緒に出来る! 仲介ならもう少し先まで出来るかもしれないし、僕がティーロさんの様に、今後それを繋ぐ人材を育てられるかもしれないじゃない?」


 ベリルが何かに負けたと思った事はそう無いのだが……“お前等”という表情が三人を見渡す。そしてため息を大きく吐いた。

「勝手にしろ……その代りここで私に宣言したのだから約束だ! 途中で投げ出す事は許さんからな」

「頑張るよ! 本当に頑張る。時間は確かに掛かるかも知れないけれど、それが最後の希望との架け橋となるようにね!!」

 


 少年は満面の笑みを自分を見守る三人に見せた。一日の事件で答えは変わったけれど、確実な夢を見つけた事にすがすがしい気分だった。
 そしてポケットに忍ばせておいた銀色のプレートのキーホルダーを取り出す。

 そして自分の物も見せながら優しく‘父親’レイの手に渡した……――