「それで、アザムはちゃんとレイと話をしたのか? と、その前に結局はどうしたいと思ったんだ?」

 昨日の夜の出来事で完全に忘れていたが、元々は自分の進む進路の話だった。

「……どうかしたのか?」

 レイは何も知らないため首を傾げて、黒い瞳でアザムを見つめている。


「あのね、ベリルさん……僕向いてないと思うんだ」
「ああ、確かに向いているとは言えない。向いているなら私を止めぬし、お前が完全に脳天ぶち抜いていただと思われる」

 聞いた言葉に不安そうに目を細めるレイの姿。
 拘束したラトからの情報しか知らなかったティーロも、訝しげに二人を見つめた。

 「だが、お前は“人間として”十分合格だと思うが?」
 
 ベリルはエメラルドの瞳を優しくアザムに向けた。

「……僕に“それ”が出来る事なのか、それがわからない」
「ん? 今、何になろうと思っているんだ……医者か? それでもやっぱり――」
「どっちも違う……だけど僕は僕の方法で、人の命を助けたいんだ!」

 大人三人は言っている意味が掴めなかった。
 ベリルとティーロの予測は医学か傭兵。レイは予測が不可能。

 “僕の方法”という言葉の意味する部分が予測が出来ない。

「僕、仲介屋とかって無理かな……」

 ティーロとレイよりも怪訝な顔を浮かべているのはベリルだった。

「はぁ? 何のだ?」
「何のって、傭兵とのだよ! 配送業者なわけないじゃないか!」
「どうやったら……そんな答えになるんだ!?」

 余りにも予想外なため、完全にアザムにペースを崩されているベリル。

 普通なら良いとか、悪いとかはレイが言うべき所なのかも知れないが、今までどこか言葉に出せなく悩んでいた時のアザムの顔と明らかに違うため様子を見ている。

「今日話して、明日になる! だなんて思ってないからさあぁー」

 ベリルに向って、わざと子どものように言うアザムの姿。