病院のベッドで点滴を打たれているレイの姿がある。
緊急搬送として夜中に運び込まれての明けた昼の事である。

 大事をとって三日は入院だが、言葉での指示で応急処置や手術の補助はモニターで十分出来る。
 
 それくらいやはり頭が良く能力はあるはずなのだが……


「え? 薬ってこれだったのか?」
「うん! お父さん大変だったんだよ……いろんな意味でさぁ――」
「なっ? 瓶を、ベリルさんか院長に何故渡さなかった!?」

 学校が昼過ぎで終ったため、病院に来ているアザムがレイをからかっている。
 レイも薬の瓶を見て副作用が想像できている。

「頼むから……もぅ、言わないでよ」


 そのときの体調に心配は無いのだが、ベリルとティーロがそんな時一緒に病室に来た。

 利用した訳ではないが、必然的にそうなってしまった事もあり、見舞いとお礼を言いに来たのだ。

 個室の中でも特別室なので迷惑は掛からないが、二人の声が廊下まで聞こえていたためベリルとティーロは入る前から少々呆れている。

「ふぅ……アザム父親をからかうもんじゃないぞ?」

 レイが嫌がっているので、部屋に入ると直ぐにティーロは軽く抱きかかえる。
 小さい子どもの様にじたばたしているアザム。
 
 そして、ベリルはアザムの持っている瓶を取り上げる。

「ああ、そうだった『これ回収』忘れていたよ……」

 その瞳は本当に忘れていたのか、疑いたくなる瞳の色をしていた。