そして二十歳前の頃には宗教としての思考と“あちら側”の考えが混ざり合い、意味合いの違う二つの言葉で括られる事になっていた。


 そういう環境化で居れば、人は完全に支配され洗脳される事など思っているより簡単。
 過去を押し込めるように残らなければ生きられなかった人々は、そうやって生き延びててきた。間違いを間違いだとはもう誰も口にはしなかった。


 
 二十歳半にはザザは戦略や戦術の訓練を受けていたので既に上位に居た。
 喋り方は少々子どものようだが人を扱うのには長けていたため色々と裏の仕事に既にまわっていた。

 ラトは見た目の端麗さもあり聖職者として位置づけされ、地位自体は聖職者の下位で補佐をする役目を任されていた。

 ピラミッドの頂点に当たる人物は同じであっても、偶像崇拝的にして隠し分離されており、スピネルが宗教団体。
 スピナは“あちら側”で一線置いている独自の団体となっていた。

 こうして実は同じ団体だという事を、巧妙に隠されていた。
 
 誰もにも簡単には気が付かれないように、意味合いを前面に出す事で鏡のふりをした透明のガラス。


 ただ、今回は“失敗なきように”という命令をザザが受けていたため、“自分を付けてください”とラトは分離さていたが自ら申し出て了承を得た。


 今回の事件も前回の事件も世界の混乱を狙ったテロなのではないという。

“無能な人間は排除すべきであり、その事で世界は全体は救われ、神々は喜んで下さる”という思想。



 その事をラトは約束どおり、‘スピネル’‘スピナ’の本部も支部も関わらず情報を全てを話した。
 元の形が解らなかったからこそベリルでも掴めなかった情報があった事実も知った。
 ザザから訊いた事のある“あちら側”の幹部クラスの人間の事も出来る限り話した。

 
ラトは心の何処かで逃走あるいは、この結末を望んでいたのかもしれない。だから、願い出たのだろう。

 しかし想定外は兄弟同然の友を自分が死に追いやったのに、自身が今も生きている事……――