ラト達はベリルやその仲間達が本拠地にしている場所に連行される事となった。
 まずは下っ端の黒服達の治療が先だった。
 
 優先順位はマニュアルはあるとしてもとベリルやティーロの指示で怪我や命が優先になった。
 

 ラトは手の傷の手当だけをしてもらい、別の部屋で数人の立会いの下で‘組織’の初めの成り立ちから話す事を許してもらった。

 それは助かりたいのではなく、ザザへの慈悲と償いと自分の懺悔かもしれない……――




 元々修道院系の孤児院であり自分たちも戦争であったり、貧しく捨てられたり様々であったがそこの園児だった。小さな時に兄弟のように育った二人。
 そして宗教とは殆ど無縁で、食事と寝る時、朝のお祈りはあったがそれは生活の規則。


 しかし園長が亡くなりその下に位置していた大人達の中で、不協和音が起こり始めた。
 
 単なる修道院が誰が上になるかと言う欲が発端で、曲がった思想が徐々に創り出され始めた。

 それでも孤児院として機能を暫くはしていた。
 数年が経ってラトとザザが十五歳頃、主教という人物から始まり階級が出来た。

 
 孤児院としてと教団としての感覚が、前園長の考えを受け継いでいた子ども達が受け入れられなかった。

 ある日の夜、隙をみて逃げ出した。事の発端はここから。

 殆どが捕まりなり酷い目にあった。
 初めはまだ食事抜きや棒打ち、小さい子どもは部屋から一日一歩も出てはいけない程度。
 
 それでも抵抗し何度も逃走を繰り返した子ども達が居た。
 半年ほどになると、ある程度の年齢になれば、男性と認識されれば拷問、女性と認識されれば……――ありがちな罰だった。

 ザザが最後に言ったフィネとは、ザザの大切な人で元孤児の女性。同じく何度も逃げ出そうとした。

 そしてある日逃げ出した罰として受けた仕打ちが元で、自ら命を絶った。


 ザザもラトも逃げ出そうとはしていたが、フィネの件でザザの思考は壊れ始めた。
 ラトもフィネだけでなく他の友、そして兄弟同然のザザのその姿に絶えられなくなっていた。

 そして自分自身も、無駄な事を考えるよりこので逆らわず生きる方がマシではないかと考えるようになっていた。