まだ、ぼんやりする頭の中で周りを見渡している。

 工場に自分が居る事、ベリルとアザムそして布を被され横たわっているがザザであろう事も理解はしていた。

 ベリルと言う人物知っているので、ザザの事はベリルに一番に“必要性”を考えた。

 混濁もあった為、今の状態だけではどういう経緯でこの状態になったのか全ての理解は出来てはいない。ただ自然な流れだろう。



 しかし唯一レイがあまり認識できない男性“ラト”が自分に近づいてくるため疑問を持った。
 その男の服の素材と、ザザに被されている布が同じであり、その男は夥(おびただ)しい鮮血に染まっていた。
 その姿に少し硬直するレイ。しかし、姿はともかく、物腰の柔らかい雰囲気に少し力を抜いた。


「あのレイさん、もう大丈夫です。それと……申し訳ないという言葉では本当に償いきれないでしょうが……ザザディッシュに代わって“申し訳ない”と……――」
 
 それ以上言葉に詰まって何も言えなくなった男を見て、レイなりの解釈し了承をした。 そして、目の前の男の何処か遠いセピア色の瞳を見つめる黒い瞳は、少し視線を落とした。

「……分かりました。あの、しかし貴方の心は壊れてしまい大丈夫ではないように思える。その瞳に映っているものは――」
――自分が生きている事の疑問、否定……

 レイはその先を言おうとした時、同じくらいの歳のラトという男に、六年前アザムにウイルスを打った時の自分の姿を見た。レイはベリルの顔を見上げた。

 ベリルはエメラルドの瞳細めレイを見つめる。レイが目で訴えて考えている事が手に取るように分かったからだ。

「レイなら分かるよな? 今はそいつ次第だという事くらいは」

 
 それから直ぐに人と物や資料を回収する車が数台到着した。ベリルが頼んだ薬をレイに投与し、次は搬送のためレドリーに連絡をした。

 


 確かに今この拉致事件はここで全てが終息した……――