「はぁ、はぁ……ラ、ラトネア? どこで俺、俺等はさ……道、間違ったんだろ? 司教……だとかの時か――」
「そうかもな、そして大切な人達が傷つき死んでいった。それに対して、段々と奴等に対して戦う事も逃げる事も、そして疑問感じなくなった時だろうね……」

 ザザは納得したような微笑みを浮かべた。

「そ、そうかぁ……もう、本当は……答え出てたんだな。お……俺さ、先……皆やフィネに……会い、たい――」

 そう言うと、短剣を最後は自らの力で引き抜く。ラトの白い衣装も返り血で紅く染まってゆく。

 麻酔薬をラトが与えたのは、ザザに必要以上の苦しみをこれ以上与えたくなかった。

 そしてその本当は解っていた自分達の本当の答えと偽りの行動。この結果で苦しむ兄弟同然の友の表情を見るのが辛かった。

 自身も同じ疑問から抜け出せないで今に至った。この場所に居る目的の姿は違えど結局は同じ。


 声だけを聞き取るアザムが、その二人の一つ一つの言葉が重くて、“この二人の人生”が予想だにしなかった鎖で縛られていた感じが伝わってきた。

 レイの事で言い返した時、一瞬曇った様な青磁色の瞳の理由が解った。
 その時あれだけ許せないと思った人間の為に涙を流した。


 薬が効いているので痛みは少々は麻痺しているが……苦しいのだろう。剣も抜いたたため出血が酷いため手遅れだとは分かる。

 何があっても“助ける”という行為の方が残酷だろう。


「ごめん、もっと早くに、それに何度でも一%の可能性にかければ……」
「いやいいんだ。はは、もう聞こ……ない。あり……がとう……ご、めん……――」

 ザザはラトに最後に謝ってそのまま永遠の眠りについた。

 ラトはザザを寝かし目を閉じ手を組ませる。部屋の端の儀式用の剣に撒きつけていた布を掛けてやった。