「ああ、そうそう“悪魔”は死なないとかラスボスは最強だけどさぁー。頭粉々に吹っ飛ぶか、心臓抉(えぐ)れば死ぬんじゃない?」
「今日私は生憎はそんな気分じゃ無い。お前等を拘束し、この親子を連れて帰るのがこの私の“契約”だからね」

 そういってザザに言葉を返すと又物陰に隠れる。
 そして、自分が持つ気配を消し移動をする。ザザを確実に拘束するために。
 ザザも気配を消している。後はお互いのタイミングだけだ。

 今のアザムは例えれば目の前での事が、早送りの様だと感じている。
 全く理解が出来ない世界。自分の前に人が存在していないのでは無いかと錯覚するほどに。

 ラトは戦い慣れもしているため、気配であったり瞬時の動きを感じ、見えているのだろ。

 
 そんな事を考えている時、二人の姿がパソコンの置いてある場所にある仕切りの部分に確認できた。

 
 その瞬間三発の銃声がした。


 ベリルの左肩辺りから大量に出血している。

 心配で思わず数歩駆け寄るアザムは、粉砕というか原型が無いベリルの首辺りからなんとか繋がっている肩の部分を見て、ザザの銃の威力が凄まじかったのをまず知る。

 しかし、驚いたのはその後だ。傷が塞がっていく感覚は医者の子どもとしての想像ならできる。

 アザムはベリルのその表現できない。言うなれば“神々しさ”にも近い状態に声が出なかった。

 痛みをかなり堪えているベリルのその傷口が“人間”ではありえない光の粒状のもので高速に再生を始めたからだ。

「くっ、私からすればこれくらいは、かすっただけだ……直ぐに治るよ」
 
 心配と驚きの表情のアザムに苦笑いを見せ、ザザの倒れている方向に視線を向ける。