アザムが持っている大振りのサバイバルナイフを指差して、ザザはレイの心を煽り続ける。

「ほら、だから右手に構えてるんじゃないか? それも一突きで殺れそうなさぁ」
「ア、アザム? アザムは、君は私を……や、やはりそうなのか? なあ?」

 両耳辺りを掌で塞ぎ、小さく丸まって混乱して叫んだレイの言葉が部屋全体に響き渡った。 
 そうして震え涙を流してザザに縋りつくように助けを求め抱きつく姿は、まるで小さな子どもの姿の様にも見え、震えて“怖い”“嫌だ”と何度も首を横に振り続けている。

 それを慰めるように、ザザに背中と頭を撫でられているレイの姿。それを見せ付けるために薄笑いをアザムとベリルに浮かべている。

 それに冷静な判断が出来ないアザムは、レイになのかザザになのか? それともどうしようも出来ない自分になのかもしれない。

 思い切り怒鳴り怒りをぶつける。


「そんな事思ってない!! お前父さんに何てこというんだ!? それよりどうしたの? ねえ、父さん!! 僕の事がわかんないの!! 僕は――」
「アザム……おい、アザム!!」

 叫びだす姿に、ベリルは今までに無くきつい口調で名前を呼び、握ったままの右手に思い切り力を込める。

「くっ、痛っ……、な、何するんだ!!」

 冷静ではないためベリルにため口で睨みつけて言い返す。
 その見返したベリルのエメラルドの瞳は言葉では表現が出来ない感情が伺えた。

 そのエメラルドの瞳が優しくも、悲しくも見える。
 そして安堵すら覚えるはずのその瞳の奥が、全ての感情を持ち合わせているようにアザムは感じた。