そして“父さん”と声をかけようとした瞬間ザザが声を掛ける。


「ありがとうラト。はは、久しぶりだねー、アザム君。あと君がもしかして……ベリルさん?」
「そうだが?」
「そんな怖い顔しないでよー。二人ともさぁ~」

 見た目が昔とはずいぶん違う気もするが声色や軽い雰囲気がそのままで、掴めない笑い方をする。アザムは睨みつけ、右手に持っていたサバイバルナイフを握り締めた。

 ベリルは前方に立つザザと自分達の斜め後方に立つラト、二人の持つ雰囲気に今は“冷静になれ”という意味でその右腕を掴んだ。
 二人にとっては、レイが人質として囚われている状態でもあるのだから。

 ザザはゆっくりと立ち上がると、昔の事を思い出すからだろうアザムは少し緊張した。そしてまともに初めて見る青磁色の瞳。
 少し見開く感じで二人を見たかと思うと、いやらしい笑いを一度浮かべた。

 そして、二人の居る方向ではなくレイに向っていき、しゃがみ込み微笑む。

「ね? だから言っただろ……ほら」

 そう言ってザザが見る方向をゆっくりとレイが見つめる。そして、レイの呼吸が少し早くなり小さく震える。
 ザザの行動と、レイの表情にベリルは訝しげな表情を浮かべた。

「――ザザ、やはりそうなのか!? アザムは、あの子はやはり私を……」
 
 自分を見て怯えている事に焦っているアザムの姿に、薄ら笑いをザザは浮かべた。

「と、父さん!? どうしたの、何を言っているの?」

 アザムは状況が飲み込めず、苦しみ出したレイの姿に慌てている。
 それでも“父さん”と何度も呼ぶアザムの声。

 それを聞くと耳を塞ぎ首を横に振るレイの姿に、アザムはどうしたら良いのか分からず、言葉に出来ない不安だけが駆け巡り余計に判断が出来ない。