工場内のラトとザザはルクティの気配が消えた事を感じた。
 同時に大きな気配が此方に向かっている事を知る。

 簡単にルクティを倒せる奴等、普通に考えても簡単には検討がつかない。

 ただ、所謂“こちら側”が嗅ぎまわっている情報も得ているので、ルクティを向わせ様子を見させたというのが本当のところ。


 そう“あちら側”だとしても“こちら側”だとしてもこの世界に浸かっている人間であれば、ベリルの事を知っている人間は多い。

 『公然の秘密』の全てを知ったとしても、仲間は基本的に詮索などしない。
 “こちら側”からすれば‘素晴らしき傭兵’ただそれだけで良い。

 しかし“あちら側”からすれば、本当の理由を知らない奴も今では多いが、関われば自身の任務が失敗する、完全に邪魔者であり消してやりたい人物。

 そういう意味でも‘悪魔、死神’と思われていて当然だ。
 そして『公然の秘密』を知っているなら、もっと知り己が手に入れたいと考える。

 ザザはその傭兵が絡んでいる可能性を否定はしなかった。
――とりあえず、ジックも沈んだら九割以上奴に違いないだろうね……

 ザザはそう思いながら小さく笑った。