走り抜けながら、敵の足等を狙い動きを封じて先に進むベリル。相手も武器を持っているが、最低限の攻撃のみを続けた。
 
 ベリルにはこの黒服の男達が戦い成れをしているようには感じられなかった。
 さっきの銃声で十人程に増えていたようだが、四人が数人増えても戦力にもなっていない。

 三人以上相手するの時はアザムに横に避けるようには命令してあるため、アザムは自分の判断で行動をする。
 ベリルに迷惑になる事は極力避けることが今は自分の出来る事だと理解している。


 お構い無しに駆け抜けて行く青年の傭兵に従い、後ろを付いて行くしかなかった。

 それは走る抜ける前にベリルが本当に言おうとした言葉と、言えなかった理由が何となく理解できたからだ。

 「戦力というより、人を寄せ付けない為の役割ね」

 動きが素早い敵は確かに太ももを撃ち抜いたが、明らかに頭数だけの人間。
 足の甲を基本的には狙った。一人一発、多くて二発程度で回収の時の処置で皆助かるようにと。


 
 建物の入り口付近まで辿りついた時、一人の茶髪の青年が俯き加減で出てきた。

「とりあえずもう一人……」
「君達邪魔しないでくれよ……面倒だ」

 出てきた男はそういうと前を見据え、銃を水平にして構えた。アザムより数歳程は年上だろうか?
 幼さが残っているというのに、その見開いたルビーレッドの瞳が威圧感を与える。
 
 此処に来るまでに倒した奴等とは違う事は理解できた。

 ベリルはそれでも余裕だが、アザムは冷や汗のような物が伝うのを感じていた。

 
 
 目の前の青年は、ラトに様子を見てくるように命令されたルクティという男。