ザザはレイの様子を確認しに近づいて言葉をかけてみることにする。

「……大丈夫? 今ピストルの音が聞こえたね……」
「わ、私を……?」
「どうだろ……そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」

 レイの不安を煽ると苦しそうな呼吸をし始め、鎖を握り締め絶望にも似た顔をしている。
 ザザはレイを子どもの様に頭を撫でると“大丈夫”と声をかけた。



 暫くしてラトが部屋に戻ってきた。ルクティとジック、そして伝え他の者にも様子を見に行くように伝えた事を報告をする。



 ラトはザザが椅子に戻る姿を目で追う時に、機械に繋がれ震えている男性の姿を初めてまともに確認をした。

「この方がレイという人ですか?」
「ああ、前回邪魔をした人物でもあるんだけどねぇ……六年前の開発の責任者の一人で頭脳も明晰。記録には見事に消去されたが、全て頭の中に改良方法も、他のウイルスの知識も持っているだろうし、大事に扱わなきゃね」

 そう言ってザザは嬉しそう微笑んでいる。

 そのザザの姿を確認したあと、ラトはレイを見つめてほんの少し困った顔で微笑む。

 そして、ここに連れてこられた時に使われたシーツを、レイにそっと巻きつけ掛けてやる。

「ディル様? 暑い季節が過ぎた頃とはいえ工場の床は冷たいでしょうから。それに“大切な客”って事なのでしょ?」

 ラトは少し困ったような顔でそう伝えると、子どもの様な笑みで“そうだったね”とザザが一言返した。