銃声は工場内にもやはり聞こえていた。

 ザザが居る部屋の前に立っている男の一人がノックをして部屋に入る。

 銃声を聞いての報告のためにアッシュグレイの肩ほどの髪を束ねた男が入ってきた。

 部屋の明かりが薄暗く髪色が黒に近く見え、長さもあり昔のレイに似た雰囲気にも見えるがレイより端麗な感じに見える。
 歳もレイやザザと変わらないくらいだろうし、背もこの部屋の中では一番高い。


 端麗に見えるのは容姿だけではなく、その服装も原因だろう。
 白の民族衣装のようなもので統一されており、鞘と柄に装飾が施された刃渡り十五センチほどの真っ直ぐなナイフが左の腰を飾っている。

 部屋の隅にもシンプルな長い剣があり布で鞘部分が軽く巻かれている。
――誰のものか? 
 考えなくてもこの男の持ち物だと誰もが推測できるように、この場所には似つかわしくない雰囲気を持っている。

「ディル様、今――」
「銃声がしたね。聞き覚えの無い音だった……侵入者だろうね?」

 慌てる事も無く会話をするザザの姿がある。ザザを“ディル様”と呼んだ男はセピア色の瞳を向けた。

「分かってる。ラト済まないが、ルクティと他の奴等にも表の様子を見に行ってもらって……ちょっと気になる事があるんだ」
「承知いたしました」
「ああ、ジックは外には行かなくて良いって伝えて。それとラトは此処に戻ってきてくれる」

 そう言われ微笑み一つ頷くと、ラトは部屋の外に出て頼まれた事をルクティとジックへ伝えに廊下へ出ていく。