アザムは“ゴメンなさい”という苦笑いをベリルに見せると、刃になるべく近い部分を持つ。

 撃ち落された衝撃に驚いている男のみぞおちに、柄の部分を突き上げるように思い切り入れた。
 渡されたナイフの重さから、柄は常備する物や薬品を入れるようになっているタイプでは無いと、車の中でチェックしていたのだ。


 男は当然嘔吐寸前の衝撃だったためうずくまっている。

 
「銃声で中にバレたかもな……」
「ご、ごめんなさい……」
「構わん」

 薄笑いを浮かべるベリルは内ポケットから二重になっている拘束に使うナイロン製の結束バンドで、この二人の男を後ろ手で結束してしまう。


 そしてベリルは近づく気配に、アザムにもナイフを構えるように指示をし、自分も銃をすぐに構える。

「後ろから離れるなよ。本当に危険だと感じたら――」

 ベリルは何故かその後の言葉を、アザムに言えなかった。“躊躇わずにやるんだ”とは……

「私が絶対護ってやる……安心しろ」

 アザムはその言葉にただ小さく頷いた。