ベリルとアザムが乗ったピックアップトラックは目的地より少し遠い物陰に停車させた。

「此処からは車は置いていく。敷地内に入ったら武器だけはいつでも使えるようにと頭に入れておくんだ……まあ、心配はいらん」

 ベリルだからこそ言える言葉でもある。本だけで得た知識の素人を、他の人間なら普通連れては来ない。

「後これを中に着ておくんだ」

 後部座席から取り出された薄手のベストの様な物を渡されるアザム。

「……何これ?」
「防弾用ではないのだが無いよりマシだろ」

 こんな事になるとはベリル自身も予想はしておらず、刃物用の防護服だけ後ろに積んでいた事を思い出しアザムに渡した。

「ベリルさんのは?」
「私はこの普通の上着で十分だと思うが?」

 素直すぎるアザムに苦笑いを見せながら、薄手の上着をベリルは羽織って先に車を降りた。


 レイの家であの時見せられた眼光に負けたというよりも、昔色々な場面で決断を下した時の自分の姿を、一瞬だが垣間見たというのが本音だったのだ。
――本での知識はいろいろ持ってるとしても、銃器は実際触った事等無いだろう……
 

 防護服を中に着てアザムは羽織っていたシャツのボタンをとめる。そして自分も車を降りてベリルに一度頷いた。