確かにせわしない朝の風景だが、よくあるいつもの事でもあり、平凡だがある意味幸せで充実している事をレイはよく知っている。

 “父さん”とアザムにまともに呼んで貰えるまでに、三年ほど費やした。
 それを思えば本当にこれが“親子”としての毎日で、当たり前の日々。

 レイはアザムが残したベーコンエッグも食べてしまい、朝食を済ませるとテーブルを片付ける。

 

 アザムは現在、義務教育課程を過ごしている。
 アメリカという複雑な国の法律制度でアザムに合ったスピードでの学習を考慮した。
 
 顔つきも大人になってきているが、まだ心はあどけなさが残っており、子どもの様な所もある。
 

 レイは現在アザムを引き取り父親として生きる事が第一の条件。

 もう一つはウイルスからアザムを、そして世界をと言ってもいいだろう。

 全てを救った傭兵“御用達”の総合病院へ勤務を言い渡された。

 これは、アザムを育てる為には職が必要という事が始まりなのだが、レイは、その病院で患者=命と向き合う事を、もう一つの償いとして生きている。