――……今までの事を絡まった糸を不器用な手で解くように、レイは不確かな頭で思い出そうとしている。

「あぁこれ、く……らいあれば……よ、かった――」

 レイは途切れ途切れながらも、意識がとりあえずあるので、“これくらい意識があれば”等とそのような言葉を口にした。実質の量も種類も理解は出来てはいない。

「ははは、良くは無いとおもうけど、レイさん面白い事言うね? お医者さんなのにさ」

 自分が投与したというのに、まるで他人事のように笑いながら青磁色の瞳でレイを見つめる。

「騒いで暴れたレイさんが悪いんだよ? まあ、何にしても麻酔薬で“それほどでも無い量”だったんだし安心してよ。しっかし、街の裏では欲しい人は欲しい物だよね? これって」

 そう言いながら、仕切りのほうに向かいザザは椅子にレイの方を向いて座る。

 そして薬の瓶を右手で軽く放り投げ手に戻し胸ポケットに仕舞った。
 ザザが持っている薬は、確かに麻酔薬の一種だが使い方次第という事をザザは口にしたのだ。

 そして、後ろを向き、机に置いてあるノートパソコンに何かを打ちながら、続きを話し出す。

「けどさぁー、レイさんって頭良いよね? 個人の総合病院の外科医なんて勿体無いよ。自分でもそう思わない?」
「……お、ぉ思わない、わ、私は今が……んだ」
「はぁ? 何で! こんな自分って、小さいとか惨めだとか思わない?」