「レイさんは“入れ物”に使ったあの子どもと、今一緒にいてるんだね? レイさんって本当に勇気あるねー」
「あの子は、アザムは入れ物なんかじゃない! 私の大切な子どもだ!!」

 ザザは小さく笑い声を上げて言葉はこう続いた。

「そんなに怒らないでよ? けれどなんでそう言えるのさ? レイさんはあの子に“あんなにも酷い事”したんだよねぇ?」

 瞳が微妙に揺れ、言い様の無い感情を浮かべるレイの反応を楽しんでいる様な口調。

「レイさんだって自分の命が助かってもさ……“許さない”とか“復讐”だとかさー……普通思わない?」

 最後の声色が変わったザザ。

 恐怖と不信で揺れる黒い瞳を見つめる冷たい青磁色の瞳。

 恐怖と発せられた言葉に強張った顔を、一瞬だが一度下に向けた。

 そして、ザザの見据えようと強い瞳を前に向けたレイ。

 しかし、ザザは薄ら笑いを浮かべて、その瞬間に間合いをつめた。そしてレイの前髪辺りをわし掴みにして自分の顔を近づける。

「俺の今回の仕事は賢い人探しってとこかな。レイさんが生きてるって最近聞いてさ……本当にびっくりしたんだよ」

 レイはザザの言葉で、自分が何故助かったのかは理由を知らないのだと知った。


 自分自身もすぐに知ったわけでは無く、後々ベリルから聞いた内容。

“ホワイトハウスに侵入して大統領に直談判という名の脅し”という本当の事を聞かされたのだから、誰も知らないのは当然だと感じた。