自身の髪の毛を指先で触りながら二歩ほど近寄るザザに、レイは恐怖感でだろう、無意識に同じ分だけ後ろにさがった。

 
 青磁器の様な無機質感がある瞳だというのに、獲物を見つけた動物のように輝いていた。
 
 喉の奥でザザは笑った後、いやらしい笑いをレイに浮かべた。

「俺はね、レベル4に貴方を閉じ込めた後、すぐに“俺”というデータを先に処理して去っただけだよ? けど今思えば、ウイルスのデータを先に拾うべきだったかもな。あれ自体が俺達には必要だったしさぁー」
「……ど、どういう事だ」


 六年前ウイルスのデータ処理をすぐに行ったのは、罪悪感に苛まれたレイだった。

 この世に存在してはならない殺人ウイルスはベリルの知識と活躍でアザムの体から消滅させれた。

 そして責任者の一人であるレイがデータを消した事で、この世から存在自体が消滅した。

「俺が“あちら側”だからって事かな。あーあ、折角二年以上も費やして金に執着した人物に社長を仕立て上げたのにさ……」

 レイはフル回転で全てを思い出している。

 確かに入社した当時社長は人の為の薬剤や新薬をという言葉を説いていた。その後自分の役職が上がってその後に、少しずつ考え方が変化していった事を思い出した。

 そして、あちら側という意味を“危険な者”という判断をレイは下した。
――本当の意味での実行犯、社長を裏で動かしていた人物?