小さいながらもその先にはリビング部分があり、そこのソファーに人の頭が見える。

 ブラインドが閉まっており薄暗く、手前のソファーに座っているため顔も確認が出来ない。

「だ、誰だ!?」

 驚いて息が止まるような感覚の上擦った声を出すレイに、人影は答える。


「一人で笑っちゃって思い出し笑いですか? それより、レイさんは“あの少年”と一緒に住んでいるんだ」

 声を聞いても誰なのか想像がつかないレイ。しかし、自分の名前と“あの少年”という言葉がレイには違う恐怖を思い起こさせる。
 


「……本当に、誰なのです!?」


 小さく笑いながらソファーから立ち上がりレイの居るキッチンに振り向く男性は毛先を遊ばした茶色い髪で淡青色の陶器の様な瞳。

 どこにでも居そうなラフな格好をしている男性。

 レイとさほど変わらない歳の男性なのだが、軽い感じがより一層若く見せているのだろう。

 その男性はずっと、自分の事が判らないレイに薄ら笑いを浮かべている。

「あはは、誰かわかんないよね……髪色は昔赤色だったし、それにサングラスで黒服姿しか見た事無かったでしょ? “レイ様”」

 わざと、レイのことを強調して言った人物を、訝しげに黒い瞳が見つめてた。

 しかし、レイの黒い瞳は、突然見開かれた。

 目の前には“居ない”はずと思っていた人物を確認したからだ。

「ザ……ザザ? どうして此処にお前が居るんだ!?」
「それは、こっちの台詞ですよ? あの時の関係者は、皆FBIに拘束されたはずですよね……俺からしたら何でレイさんが“この世に居るのだろう”って感じだよ」