「レイさん、お目覚めですか? 気分は……余り良くないよね? やっぱり」

 レイはその軽い喋り口調で、誰が話しているのか確認出来ているが、意識が朦朧としているので目の前の人物をその黒い瞳は感知してはいない。

 何が遭ったかを一つ一つ思い出そうとしている。
 
「あ、ぁザ……ァ――」

 まだ全てにおいて醒めきっていないのだろう。

 聞こえてくるその声に、名前を呼ぼうとしたがうめき声のような声を出すのがやっとだ。

 動こうとしても力が入らない。どちらにしても近くの機械側とレイの右足側は、少し長い鎖と鍵を使って繋がれている。

 呼吸がしにくくて意識が混濁している理由が、レイには一応は分かっていて、意識を取り戻そうと余り効果は期待できない行為と解ってはいたが、自分の下唇を思い切り噛んだ。

 

 床が流れ落ちる血で汚れてゆく。

 そして薄っすらとだがやっと、男の青磁器の様な瞳の色が確認出来た。

 
 その必死なレイの姿に男は、いやらしい笑みを浮かべて見つめていた。