二人はすぐに車に向かいベリルは携帯をカーナビに差し込む。

 ティーロからの連絡待ちだが、向わないより少しでも早く向かう方が良いと判断。先ほど言われた辺りを目的地に設定し車を走らせる事にした。


 途中ベリルは車の後部座席の足元に積んである荷物から、刃渡りだけで30cmほどもあり、柄もかなり長いタイプの鞘入りのナイフを取り出す。

 そしてアザムに近づける。“お前への武器だ”と言いたげだ。

「え……これ大きくない? シースナイフとかファイティングナイフとか、普通もっと小さい――」
「普通のサバイバルナイフじゃ刃渡りが短い。普通にナイフの大型なものだと思えばいい。思っているより使いやすい。それに私の使うナイフはお前には無理だ――」

 無理だと言うのは本当の事であり、投げる、接近戦は訓練が必要となる。


 瞳を細めながらもナイフを見ているアザムだが、ベリルの装備している銃と暗器の多さを思い出しちょっと納得をした顔を見せた。

 だがやはり、自分の中でのナイフのイメージと違うためか首をかしげている。
 
「ま、まあ……だ、だけどさ、これもうほとんど剣じゃん!?」
「……いや、サバイバルナイフだ」

 アザムは強がっていてもまだ十六歳で、それも自分の父親が連れて行かれた事で動揺は隠せないのだろう。

 ベリルには冗談ぽく助手席にいる少年に話しているが、その複雑な感情が直接言葉を聞いているかのように心が伝わってくる。