「いや、ウイルス自体未改良なのだろう。各国で医学や化学の知識が高い人物が行方不明になったり変死体で見つかっている。そして今回こっちでコンピューターへの侵入と行方不明者が出て呼び出されたんだ――」
「それじゃあ、さっきの遺体って……――」

 やっと落ち着いたアザムの瞳が再び涙を溜め始めている。そしてベリルの肩に縋りつくように言葉を発する。

「ねえ!? 父さんも危ないんじゃ!!」
「いや、ウイルスの知識あると分っているよう思える。確かに猶予が有るとは言わないが――」

 今は“大丈夫”と言う意味で小さく微笑んだベリルに、ほんの少しだがアザムは安堵し一つ頷いて下を見た。



 今までの被害者は、資料や部屋もほとんど荒らされていなかった。製薬会社の人間でさえも同様だったのだ。

 すぐに拉致された疑いがある。“知識人”という情報のみでの行動とも思えていた。

 だが今回は全く違った。

 見たままの状態を考え一旦整理すると、キッチンでも二階に上がったとしても動揺を与えられるように、武器や危険物のみを表に出してあり、軍隊や情報に使う無線などの本は、引き出しの中や見えにくい場所に置かれたままだった。


 ベリルの視点から見て、それはアザムへの不信感を煽れそうな物。
全てを事を繋ぎ合わせてゆくと、まだ不完全だが一つの結論がベリルには出ていた。

「まだ憶測なのだがレイの素性を知っている人物で、きっとお前の存在も多分知っているという事になるんだが……――」


 それがたどり着いた答えなのだが、関係者は国からの命令だったためFBIが全力で捕まえたはず。
 そして捕まった重要人物の殆どは、極秘という名の……――抹消という名の処理。