「次はレイの部屋だ。そして、お前に話す事もある」



 向かい側のレイの部屋を見ると、アザムの部屋以上に酷く荒らされている。
 本棚はもちろん、資料関係やパソコンまで内容を確認された形跡が残されている。
 
 ベリル直ぐにパソコンの中身自体を検索した。
 レイを疑っての事では無い。確認された形跡で掴めるものもあるからだ。

 パス制限のありそうな場所も無く、ウイルス関係やその改良方法等はどこにも見当たらなかった。
 
 それは同時にレイが六年前の事を自分で清算しアザムと病院に全力を注いだ証拠でもある。
 
 相手が欲しがりそうな情報は入っていなかった。ただ、相手が開けたであろうフォルダはやはり医学関係だった。



 ベッドの上は余り散らかってはいなかったので、ベリルはアザムとそこへ座った。


 そして、今回の事件の話をする。

「私がこっちに来たのは休暇じゃない……二人には伝えず片付けるはずだった」
「え? 知られたく無いこと?」


 一呼吸を置いてからアザムの肩に腕を軽くかけるようにし、エメラルドの瞳を向けて話し始めるベリル。

「此処最近になって不穏な動きが各国であり、それを追うために来た」
「不穏?」
「言い難いのだが、六年前と似た動きと判断している」
「え? ウイルスをばら撒くって事?」

 だとしたら、未然に終った六年前の事件だが、それに利用された子どもには心苦しい事実。