「うわー、遅刻かもしれない!  何で起こしてくれないのさー!」

 そう大声で叫びながら、階段を急いで下りてくる少年の名はアザム。
 六年前の被害者となった戦争孤児だ。

 現在は十六歳で髪はウェーブがかかったダークブラウンで、昔より少し長く肩ほどの長さだが、邪魔にならない程度に横髪などは短めになっている。

 背は同じ歳頃の男性より少し小さいが、健康などには問題は無い。髪色より明るいブラウンの瞳を手の甲でこすりながらも、慌ててキッチンに入ってくる。

「え? 私が悪いのか……」
「ちゃんと起きるまで起こしてよー!」
「おいおい、何度も起こしたのだが……とりあえず、顔くらい洗いなさい」
 
 その言葉には返事もしないで、お構い無しのアザムの姿がある。

 既にキッチン横のダイニングスペースにあるテーブルに向って、少し呆れながら苦笑いを見せ、アザムの言葉に返している男性の姿がある。

 一階からアザムを何度も呼ぶ毎に返事だけは返ってきていた事と、アザム自身が結局はぎりぎりまで下りてはこなかった事も一緒に伝えた。

 しかしアザムはそれを否定しながらも、少し笑っている。