他愛の無い話をしていたが、食事も終わってコーヒーをもう一杯ずつ頼む。

 その頃会話が途切れる時を見計らっているアザムの姿がある。
 ベリルはそれをすぐに感知した。アザムの空気が変わり“何か”を話したいことを……
 
 そして、ベリルは瞳を細めアザムを見る。ベリルほどではないが空気を察知したティーロもアザムを見る。

「何か悩みでもあるのかね?」

 単刀直入に聞くベリルに苦笑いをアザムは見せる。

「はは、やっぱり凄いね。僕の雰囲気を読み取ったんでしょ? ティーロさんも……」

 その言葉に聞いている二人は眉をひそめる。何を相談したいかまでは分らないからだ。

「僕ね……」

 アザムの暫くの沈黙が続く。

「あのさ医者になろうと思った、思っていたんだ」
「思っていた?」

 思わずティーロはアザムの言葉の最後をオウム返しをしてしまう。
 
 ベリルは瞳を細めアザムをそのエメラルドの瞳で見つめ続ける。

「ねえ……」

 その後の暫くの少年の沈黙。
 
 決心が付いたのか少年の口は開き、想定外な事を口にする。

「ねえ、どうやったら傭兵になれるの?」
『傭兵!?』

 言葉は同時に吐かれた。それはベリルにも想定外であり、その答えに行き着くとは考えていなかった。
 
 当然、唖然とする大人が二人、少年の前に存在する事となった。