アザムは何かを買ったらしく、横に下げている小さなカバンの中に一つ袋を仕舞っている。

「カバンとか、普通にキーホルダーでもいけるけど、携帯電話にも似合うでしょ?」

 自分の携帯にストラップとして、シンプルな丸い銀色のプレートのキーホルダーを付けてみせる。そして二人にも同じ物を照れながら渡す。
 
「はい、別に高いものじゃないけど……父さんの分も買ったから皆でお揃いだよ」
「値より心だ。ありがたく頂いておくよ」

 エメラルドの瞳を細めて優しく微笑むベリルの姿。ティーロも優しく微笑みながら少年の頭を二度ほど撫でる。
 
「ということで、お礼にティーロが奢ってくれるそうだ」
「え、何故今そういう話になるのです?」
「嫌なのか?」

 ベリル見るティーロは眉をしかめているが、すぐに笑顔を見せる。

「ははは、構いませんよ。何をアザムは食べたいのです? しかし沢山店があるので迷いますな」

 アザムは二人のやり取りが冗談交じりだが、本当に優しさに満ち溢れている事が嬉しくてたまらない。レイもこの二人が居たからこそ、自分の父として生きてこられたのだろうと、今更ながら痛感して心の中で感謝をした。


「うーん、何でもいいけど……コーヒーが売りだってそこに書いてあるから、そこのカフェでもいい?」
 
 アザムはブラックボードを指差しながら二人に尋ねると、その言葉に小さく頷きカフェに入る事にした。