仕事を終えて家に帰ったレイはすぐアザムに、ティーロに会った事を伝える。

「明後日の昼過ぎには、ベリルさんの車で来るらしいが、時間は取れそうかい? 無理なら連絡するけど」

 アザムは暑いのか上に羽織っていたシャツをイスの上に掛けると、Tシャツ姿になって小さな手帳を開けて、用事が無いか確認をしている。
 
「明後日は何も無いからOKだよ。まぁ、あってもこっちが優先だけどね!」
「私は前日が夜勤で仮眠して帰るから、ちゃんと起きるんだよ」
「分ってるよ……ちゃんと起きるから大丈夫だよ」

 

 話が一段落ついたら、二人で協力をして夕飯を作り始める事にした。
 レイもジャケットをイスに掛けると、ワイシャツの袖を肘まで捲り上げる。

 
 隣で並んで料理を作っている時レイは、ベリルに“訊いてみたら”と言われた事をふと思い出した。

 訊ねてはいけないと思うのは“父親”に成りきれていない部分から来ているのではないかと、自問自答を繰り返していたからだ。

 そしてアザムは、明後日二人に会う事がある意味“良い機会”だと心の中で捉えていた。
 自分の中にある疑問やこれからの事を聞いて貰う人物としては最高の二人だと考えている。

 レイだから、父親だからこそ言いかねている部分があるという事。

 二人の気持ちは互いを考えているがどこかで交差している。

 しかし、二人で食事を作っているうちに悩みも忘れてしまう。結局何事も無かったかのように、談笑をしながら食事を作っていつもの二人の姿となる。