「しかしレイは年々柔らかく、優しくなってゆくような気がしますな」
「え? そうですか……だとしたら、アザムやここの病院の方、そして患者さんのお陰でしょうね」

 突然言われたので、レイは下を見ながら照れくさそうにティーロの言葉に答える。

 しかし、それは本当の事だと思っている。

 “あの時”ティーロがベリルに要請し全てが潰れていなければ、今の自分は居なかったのだと理解をしている。

 その言葉にティーロは小さい笑みを浮かべる。昔の冷たい感じは全く見られなく、本当にレイらしい答えだと思ったからだ。



「そうだった。ベリル殿からは時間を取る様に聞いたよ。明後日の昼頃からなら時間が取れる。ベリル殿と昼過ぎには家に迎えに行くと、アザムには伝えておいて欲しいのだが宜しいか?」
「OK! 土曜なので一日空いているだろうからね。アザムも二人に会えることを喜ぶだろう」

 半時間ほど会話をしてアザムとの約束の確認をした後、ソファー下に置いた大きな荷物を指を差しながら残念そうな顔をする。

「実はさっきこっちに着いたばかりなのだ……もう少し話していたいが今日は帰ることにするよ」
「それは申し訳なかった。ティーロもベリルさんも忙しいというのに、私のために時間を取ってくれて嬉しかったよ」

 そして、“暫く”こっちに居る事を付け加えたティーロとレドリーに一礼をして二人とも院長室から出てゆく。