レイは思っていたより仕事が長引き遅くなったので急いで家に帰った。

 

 家に着くと、先にアザムが既に帰っていて食事を作っていた。遅くなった事に苦笑いを浮かべているレイに、何故かアザムも苦笑いを見せる。

「すまんな、遅くなってしまって――」
「有り合せで作ったけどいいよね? ちょっと味が濃いかもしれないかな……」

 テーブルには有り合せで作ったとは言うが、きちんと食事が用意されていた。
 
 スープとパンと鶏モモ肉のソテーに少し煮詰めすぎた感じのトマトソースがかかっている。
 アザムの苦笑いの理由はトマトソースだった。

 レイは上着をソファーにかけると、用意されているテーブルに向かい、二人とも着席したら簡単にお祈りをしてから食事を始める。

 一緒にとる夕食での決まり事。
 
 アザムと一緒に住んだ当時は我侭で、少し遅くなったら怒ったり、泣いたり……最悪だったのは、怒り泣きしながら病院まで来たときもあった。

 二人が時間をかけて互いに親子なのだと納得し始めるようになってから、そういうのは少しずつ無くなり、今ではすっかり落ち着いた。

 アザムは今日一日の学校の事を一つ一つ説明するかのように報告をする。初めはお祈り同様で約束事や決まり事を決めていた。
 これもその一つで、話を聞きそして話し合いをしていたが、今は習慣となっているのだろう。

 そして食事が可能な時は、一緒に夕食をとる事も約束の一つ。