レドリーも席に座って、首を横に振りベリルに報告をする。
 
 紙には人のアクセス記録、薬に培養等のデータ等小さな病院の割にはいろいろな事が専門だと伺える。
 
「見ての通り、データに侵入された形跡だとか無かったよ」

 そう話すと、レドリーは印刷した資料をベリル側に広げた。

「しかし、他国で変死体として見つかった者も数名居るようだね?」
「ああ、だが狙われたのは全て、大学病院に大手製薬会社レベルばかりだ」

 自分が絡んでいるのと、小さな個人総合病院程度ならまず大丈夫だと判断はしていたが、念のため調べてもらっていたのだ。

 さらっと言ったベリルの言葉に院長は苦笑いを浮かべながら答える。

「酷い言い方だなぁ……しかし、ある意味六年前の事件を公に晒(さら)した方が――」
「国は自分達のミスを隠したがるのは当然だろう?」

レドリーは怪訝なというか不安そうな顔をしながら話を続けた。

「しかし狙われているのは皆、ウイルス学や培養が専門分野でと言う時点でそう思わないか?」
「確かに公にしていれば、“大人しく違う事”を考えるという事か?」

 ベリルは国家という存在を皮肉な言い方をして苦笑いを浮かべる。

 レドリーもその言葉に苦笑いをすることしか出来なく“……違う事もダメだけどね”と付け足すように呟いた。

 そして二人は暫くこの事件と、レイの今後の話等をして時間を過ごした。