「…意味わかんない…」
「意味わかるやん?
愛ちゃんは、可愛いんよ。
マジ、可愛い(笑)。」
「…もう、やめて…
恥ずかし過ぎるよ。」
なんて答えながらも、可愛いなんて言われてドキドキしちゃってる私。
苦しいくらいドキドキしてるのを隠して、私は幸谷君の背中を眺めた。
駅前のロータリーを見送って、商店街に入る。
そこを通り抜けた先にある小奇麗な小さなお好み焼き屋さんの暖簾を潜った幸谷君が「兄ちゃん、居てる?」って少し大きな声を上げた。
冷っと涼しいクーラーが心地良い。
「まだ、開店前やで?雅斗。」
お店の奥から出てきた人は、咥え煙草のまま、私を見て固まった。
「噂の彼女?」
「なんやねん、その噂のって…」
「郁が言うとったんよ。
昨日、アイツ、来たから。」
「…アイツ、余計なこと言うとったん違うん?」
「(笑)。
桜阪高校で一番可愛い女が雅斗のマジカノや~。言うとった(笑)。」
「うぜぇ…(笑)。」
楽しそうな幸谷君。
幸谷君とどこか感じの似た人は、幸谷君の従兄弟。
「彼女、名前なんて言うん?」
私に向けられた視線に少し躊躇する私。
でも、幸谷君と似た雰囲気が私を緊張から少しだけ解いてくれた。
