幸福論



駅は大混雑。

凄くごった返していて、私は幸谷君に繋がれた手を離れないようにギュッと握りしめた。






「ちょっとだけ歩けるか?」





「うん。」





「もうちょっと行ったとこに知り合いの店あんねん。

そこ寄るわ。」






茶色い髪。

綺麗…。




その長い前髪を指先で摘まんだ幸谷君が、少し様子を伺うように私に声を掛けた。

知り合いのお店…?

ちょっと戸惑いながら私は頷いた。






「…うん。」







駅前のロータリーは車でいっぱい。

バス停にも人・人・人…






「凄い人だね…?」







「海開きして最初の日曜やもん。」






「なるほど…」






一人頷いて納得してる私の手を引きながら、幸谷君は肩を震わせて笑うから、何が可笑しいのかわかんない私は、頭に?マーク。







「やっぱ、お前って可愛いな(笑)。」