幸福論



小さく溜息を吐いた幸谷君が私の髪を優しく撫でた。





大きな手…。





また胸がキュンッと心の中、音を立てた。







「…さっきの男…、誰?」






「さっきの…?」






「コンビニ…」






「あ、七原くん?

同じクラスの人だよ?」





頭を撫でてた手が肩に降りて来たと思ったら、グッと引き寄せられた。

視界いっぱいに広がる幸谷君の胸。






「なんか、ムカついた…。

お前が他の男と喋ってんの見て、ヤバかった。」





背中に回った幸谷君の腕に力が籠ったのが分かった。






頬に感じる心音。





トクンットクンッって聞こえる。






電車の振動じゃない、微かな響きに私の顔は火照るのに、あまりにそこが心地よくて、そっとカラダを預けた。

背中に回った腕は力強くて。

甘い香水の匂いと幸谷君の匂いが混じって私の心臓は跳ねる。

でも、

ずっとそれを感じていたい私が居る。