「あ、七原くん…」





「偶然やなぁ。

俺、今から部活やねんけど、始まる前から腹減ってもて(笑)。」





と、手に持ったメロンパンとカフェオレの紙パックを掲げて見せた。






「クスッ(笑)。」






笑顔が凄く可愛くて自然と顔が緩んじゃう。

白いTシャツにはスポーツメーカーのロゴ。

紺色に黄色い三本線のジャージ。

赤いエナメルのスポーツバッグを斜めがけした七谷くんは、日に焼けた肌に真っ白な歯を見せて笑った。

茶色い髪は、何となく幸谷君っぽいな…なんて思ったけど、人懐っこい雰囲気が私の中の警戒心を解いた。

まだ、男の子は苦手だけど、不思議とこの時七原くんの笑顔と肩の力が抜ける態度に、私は自然と口元が綻んだ。







「高杉って家ここらへんなん?」






「うん。

あのバス停の向こうなの。」






私は通り向こうのバス停を指差した。

そしたら、大袈裟に驚いた七原くんが「桜台ガーデンパークの住人?」って聞いてきた。

私の家のある場所の名称。

山を切り開いた新興住宅地の呼び名を口にした七原くんに視線を向けると、「俺もやし」って口元をおさえて居た。






「高杉ってバス通プラス電車?」






「あ、うん。」






「会わへんわけや…。

俺、サッカー朝練あるし、チャリ通やもん。雨の日くらいや、バス通やなんて。」