「はい、高杉です。」
『あ、幸谷ですけど、愛子さんおられますか…』
「あたし…です。」
『うん、わかってた(笑)。』
幸谷君の声に毎度ドキドキが増す。
だから、相変わらず上手く言葉を紡げない。
もう、付き合いだして少し経つのに、全然慣れない。
キスだってシたことあるのに…
『今日は、マジ、ビビった(笑)。』
「幸谷君、あそこのガソリンスタンドでバイトしてたんだね?」
『ん、中学ん時からね。
ウチ、家庭事情ヤバいから働かんと遊べやんから。』
ヤバい家庭事情…?
幸谷くんは、おばあちゃんに育てられたって言ってたことかな…?
でも、中学からって…。
「中学からシてるの?」
驚いて少し大きな声になった私に受話器の向こうで幸谷君がクスッと笑ったのがわかった。
「作次知ってるやろ?、上野作次。
アイツん家やねん、あそこのガソスタ経営してんの。
だから、年齢詐称で雇って貰っててんよ。」
