恋に恋して





『じゃあ、また電話する。』





電話を切る時の切なさを知った。






「バイト頑張ってね…」






『ん、じゃあ、また。』






プツンと切れた電話。

無機質な機械音。

聞きたくないから、先に電話を切ろうと思うのに

いつも、幸谷君が切った後に、受話器を下ろす私。






階段に座ったまま、受話器を握りしめてた。

切なくて、

どうしようもないの。






ガチャッ






「ただいまぁ…、あれ、愛ちゃん、そんなとこで何してんの?」






ネクタイを緩めながらパパが靴を脱いで、私の傍に来た。







「パパ…、お帰りなさい。」






少し潤んだ瞳を隠す様に私は、立ち上がってパパに背中を向けた。






「パパ、今日ね、パパの大好きなハンバーグだよ。チーズたっぷりの。」






「お…。

いいな。愛ちゃんが作ったの?」






私の髪をクシャッと撫でたパパの大きな手と幸谷君の手がリンクして、胸がキュンと心の中で音を立てた。






「うん。

ママと一緒に作ったんだよ。」






こんな日常で満たされた私は、幸せだったのに、今は、それだけじゃ満たされない。





幸谷君、今日は、どんな夜ごはん食べてるんだろう…




全部が彼に繋がる自分に軽く溜息が出た。