「着替えの服持って来いよ。
その桜阪の制服、目立つから」
有無を言わせない幸谷君に、私は頷くことも出来ない。
「わーかった?」
「でも…」
「でもやない。
わかった?ジーンズとTシャツでええから、持って来いよ。
せやないと、そのセーラーのまんま乗せるで?」
「でも…」
「俺、彼女出来たら後ろ乗せるん夢やってん…。
あかん?」
上目遣いに私の様子を伺う幸谷君に、私は、困惑したまま、小さく頷いてしまった。
だって、
可愛いんだもん。
男の子を可愛いなんて…怒られちゃいそうだけど、すごく私の母性本能をくすぐられて、なんでも許してしまいそうになる。
「よっし、頷いたな。
明日、絶対やで?」
駐輪場で、白い私の自転車の鍵を外した幸谷君が「ほら、乗り?」って、荷台を指差した。
「明日の練習や。
ほら、道教えてーや?」
凄く強引で
凄くカッコ良くて
凄く男の子…
なのに、たまに儚くて
甘えん坊…
今日一日でいろんな幸谷君を知ってしまった私は、もう、後には戻れない。