この時、中三だった私は、高校に入学するとき、この土地に引っ越して来ることは決まっていた。
パパとママは、元々この街の出身で、ここで出逢った。
ママはパパが初恋。
その恋を実らして今、私が居る。
「パパと、出逢ったの、愛ちゃんが受験した高校なの。
愛ちゃんも、高校で素敵な恋見つけられたらいいね。」
ママの言葉に実感も無いまま。
恋…なんて、まだ知らない。
私は、自分の意志も何も無く、ただパパとママの薦めで、二人の母校を受験した。
幼稚園からずっと女の子だらけの学校で過ごしてきた私。
ホントはね、ずっと、女子高、女子大へと、エスカレーターで上がって行く予定だったのに、今、私が通い始めているのは、地元の進学校。
その高校は共学。
文武両道、自由な校風がモットーらしい。
確かに自由な雰囲気で、居心地は悪くなかった。
東京から来た私にも親切にしてくれる。
でも、生まれてずっと東京で暮らしていた私。
まだ、この街に馴染まずにいた。
人も
景色も
言葉も
全部が私には異国…。
元々、いつかはおばあちゃんと同居する予定にしていたパパとママはその時期が早まっただけよ、とあっけらかんとしていたけど、私は、内心不安だらけだった。
おばあちゃんのことは大好きだけど、東京から離れるのが不安で寂しくて仕方なかった。
部屋から見る空に涙を零す日々が、最近続いていた。
東京にいる友達。
手紙が届く度、嬉しいのに切なくて、胸が苦しくなった。