「零さんように、しーや?
走るで?」
莉子ちゃんが小走りに駆けだした。
私はその背中を一生懸命、両手に塞がった紙コップを握りしめて早歩き。
だんだん遠くなる背中に焦るけど、これ以上早くなんて走ったら、絶対零すもん。
急に立ち止った莉子ちゃんが私の耳元で囁いた言葉に胸が暖かくなった。
「色んな話してごめんな?
ウチな、このこと全部、人の言葉で、愛子の耳に入るん嫌やったから。
幸谷先輩って、ちょっとわかんにくいから、しんどいかもやけど、さ、もし、泣かされたら、めっちゃ慰めたるから、遠慮せんと言うといでよ。
ウチら友達やからな。」
莉子ちゃん…
気持ちがホワッと暖かくなった。
立ち止まったままで居る私に莉子ちゃんがクスッと笑った。
「ほな、先、行くで?
あんた、鈍臭いから(笑)。」
また、私に背中を向けて駆けだした、莉子ちゃんの後を私も着いて行く。
段々離れていく。
屋上に着いた時、体をすり抜けた五月の風が心地良かった。
「愛子~。
遅すぎやし~。
休憩、後、7分しかないで~。
早くおいで~。」
手招きして笑う三人の元へ駆ける私。
「零さんとってよ~。」
「うん。
大丈…ッ、ウワッ。」
「アホッ、
愛子ッッ。」
何も無いコンクリートの継ぎ目で躓きそうになった私に、焦る三人。
