私の方を見ながらいちいち指差す沙穂ちゃんに、私は聞き返した。
「姫じゃ、ないし。」
「愛子は、きっと二工の姫なんやろーな。
あのグループがそう言うんやから(笑)。」
「にこう?」
「そ。第二工業高校。
幸谷先輩たちの通ってる高校。
あんまり評判のええ学校違うねんけど、男前が多い(笑)。」
「へぇ…。」
知らないや…。
でも、幸谷くん、さっき、二工の…幸谷って自己紹介してくれてたっけ…。
「今、思えば…、幸谷先輩の姫は愛子で、幸谷先輩の為にみんなで、愛子のこと朝っぱらから探してたん違うんやろか?」
「うわぁ、なんか、凄いよなぁ。
あの幸谷先輩が、愛子に片想いしてるとか、感動してしまうんやけど。」
裕子ちゃんの声に沙穂ちゃんが笑った。
「ほんまやでなぁ。
そんな愛子と友達やって、自慢や(笑)。」
「…もう、やめてよ。
恥ずかしくって、顔上げらんない…よ。」
恥ずかしいのと、居たたまれないのとで、私は、声が震えた。
