裕子ちゃんに同意を求められた莉子ちゃんが、黙々と食べていたお弁当を膝に置いて、私を見た。

莉子ちゃんは、凄く大人っぽくって、口数も少ないから、どう言われるのが少し怖かった。

身構えた私に、莉子ちゃんは、柔らかい笑顔を向けた。







「駅で、女の子待ち伏せして騒ぐタイプやと、思わんかったわ(笑)。

愛子は、レアやで?」







レア?





呆けた顔をした私に皆が笑った。






「幸谷先輩って、中学の時から、硬派で、近寄りがたい雰囲気やし、笑う顔見たこと無いくらい無表情で、告って来た子には、異常に冷たいんで有名やねん。

喧嘩上等やし。

めっちゃ、強いし。

鬼なんやてよ。

まあ、ウチらとは、正直違う人種やけど、そんな先輩が、形振り構わんと追いかけるんレアっちゅうの。

しかも駅みたいな公衆の面前で、抱きしめるとか、想像つかんもん。

ってかぁ、うーらーやーまーしいっちゅうの。」





大袈裟に口を尖らせて私を茶化す裕子ちゃんと、それを笑う沙穂ちゃんと莉子ちゃん。

私は、色んなことが実感できなくて、そんな三人を前に気後れしてしまう。






「まあ、でも、愛子やで?

納得やろ?

あの幸谷先輩にそーさせるんは、凄いよ。

改札口で、毎日やで?

びっくりやわ。

な、姫?」







お弁当の卵焼きを大きな口を開けて、一口でパクッと食べた沙穂ちゃんが、口をもぐもぐ動かしながら、意味深に私を見て口角を上げた。





「?」





姫?







「姫やで?あんた。

『今日は、乗ってたぞ。
姫見えた。
ポニーテールやったぞ。』

ほら、あんた、今日、ポニーやん?
愛子が姫、納得やし。」