甘酸っぱいに味に余計胸がキュッとなる。
きっと、この味を感じる度にこの胸の甘い痛みを思い出すはず。
小さく溜息を吐いて、窓の外を眺めた。
一階の保健室。
窓のカーテンが揺れて心地良い春の風を運んでくる。
今日、恋が始まった。
でも、この時は、まだ、自分の新しい感情に上手く着いて行けない私は、それが恋の始まりとも気付けない。
ただ、幸谷くんのことを思い出すと胸が熱くなった。
ただ、幸谷くんのかたい胸を思い出すと胸が苦しくなった。
ただ、幸谷くんのことを考えると、切なくなった。
緑の木々。
先生のタイピングする音だけが響く保健室。
♪~キンコーン…カンコーン~…♪
間の抜けたチャイムが鳴った。
一時間目終了のチャイム。
「…先生、ありがとうございました。」
「ん、頑張れよ。」
「(笑)。はい。」