「私まだ残ってるから、先帰っていいよ。」
そう言って私を見送ってくれた亜子が
最後に私に言った一言が、耳から離れなかった。
「夢乃、これだけは覚えておいて。」
「琢斗も、今もの凄く辛いと思うよ。」
そして、その時の亜子の表情も。
唇を噛み締めて、あの時の琢斗とおんなじ顔してた。
辛そうな、
何かもっと他に言いたそうな、
そんな顔。
『ごめん』って言われるよりも『ごめん』って言うほうが辛いって、誰かが言ってた。
じゃあ、それを見ている人間の辛さは?
ましてや、その相手が自分の好きな人なら…?
私はこの時、
琢斗の辛さも
亜子の辛さも
全然分かってなかった。
だからこの後また、みんなを傷つけるようなことを平気でしちゃったんだ……