白い吐息

教頭が咳払いをしながら話し掛けてきた。

「すっ…すみません」

琴は深呼吸をして、ソロリソロリと自分の席に着いた。
落ち着いてから、そっと横目で隣の森下の席を見る。

誰かに押された…
それが事実なら突き落とした犯人は誰?
彼を恨んでる女性なら沢山いるかもね…
私だって………


琴は足で森下の椅子を蹴った。

「…今日で今学期の部活は終わりか」

呟きながら、日直から預かった日誌を開いた。

4月までさかのぼり、1ページづつチェックしていく。
真人が日直の日を見つけると自然と顔がにやけてしまう。

「落書きだらけだな〜」

……?

琴は落書きの中にある言葉を見付けた。


Please keep it secret.


秘密にしておいて下さい?


何?


琴は真人が日誌を付けているページを探す。
そこには全て同じことが書かれていた。


秘密?


秘密を握られているの?

森下先生に…


琴の頭に昨日の会話がよみがえってきた。



―オレはお前の秘密なら何でも知ってるんだぞ―



―おとなしくしてないと全部ばらすぞ―



―白居家の秘密―
―例の事件…―



そう、昨日の森下の言葉。
真人に向けられた脅迫めいた言葉。