白い吐息


「嘘ね」

ぜんぜん手の付けられていないお弁当を見て、関口先生は琴の腕を掴んだ。

「ぁ……」

何も言えない琴。

「何度も言うけど、私の目は誤魔化せないわよ」

関口先生はそう言うと、ずりずりと琴を保健室まで引っ張って行った。

「何があったの?」

無理矢理イスに座らされて関口先生に問いつめられる琴。

「……」

内容が内容だけに困る。

「担任代行を任されて不安なの?」

一応それも当っているので琴は軽く頷いてみた。

「そうか…」

「何で私なんですかね?…副担の先生だっているのに…」

「それは訓練よ」

「訓練?」

「ここだけの話だけど、来年度からあなた、クラス受け持つかもよ」

「えっ!」

琴が大きな声を出したので関口先生は唇に人差し指をあてた。
背中をまるめる琴。

「教頭が話してたの。あんた一生懸命やってるから安心だなって」

「教頭がですか?」

「あの人も何だかんだ押し付けてるけど、ちゃんとあんたの働き見てるのね」

その言葉を聞いて、琴は胸がジーンと熱くなった。

「たった一人のために部活してるしね」

関口先生はニヤニヤと笑って付け足した。

「そのことなんですが…」

琴が小さく口を開く。

「ん?どーした?」

「あっ…あの…」

「白居真人と何かあった?」

関口先生は直球だ。

「実は…」