白い吐息

不機嫌な声。
その声は真人だった。

「しゅっ…出席を取ります!」

真人を無視して琴は出席簿を開いた。

「大きな声で返事してね!聞こえないと欠席にするから」

真人の顔が見れなくて、琴は出席簿で自分の顔を隠した。

そしてそのまま真人の顔を見ることなく、ホームルームを終えた。





「長谷川先生」

職員室でお弁当を食べてると、琴の肩に温かい手が触れた。

「関口先生!」

「何、ボーっとしてるの?」

「関口先生こそ、職員室に用事ですか?」

「あなたが来ないから迎えにきたのよ」

関口先生は笑ってそう言った。

琴は、ほぼ毎日、保健室でお弁当を食べていた。
昼食を取りながら関口先生に愚痴を聞いてもらう。
それが日課のようなものだった。
おそらく関口先生は保健室を訪れない琴を心配して来てくれたのだろう。

「今日はここでお弁当?」

「はい…試験問題とか…作らないといけないし」

嘘だ。
昨日のことがあって、あの場所で物を食す気になれなかったのだ。